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「さぁ 家に帰ろうか」

りいふが支える「諦めなくていい」暮らし①

 

「看多機が、どのようなところなのか分からない」

そんな声をいただくことがよくあります。

 

そこで、看護小規模多機能「りいふ」は、どのような方と出会い、ご本人やご家族とどのような関わりをしているのか、これから数回にわたり、実際にあった話をご紹介します。

 

第1回は、入院中に食べることが難しくなった花江さん(仮名)の、退院後のお話です。

 

 

自宅へ帰るという選択

花江さんは、大腿骨の骨折をきっかけに入院されていました。

入院中に認知機能や身体の力が低下し、次第に食事が進まなくなりました。

点滴による治療も行われましたが、花江さんが針を抜いてしまうことが重なり、治療を続けることも難しくなっていました。

食事や水分を十分に取ることができない。

移動や排泄にも介助が必要。

状態によっては、自宅で最期を迎えることも考えなければならない状況。

それでも、

花江さんとご家族が選んだのは、いつもの「家」へ帰ることでした。

 

娘さんたちには

「帰してあげたい」という思いと、一方では「本当に、自分たちで支えられるのか」という不安もありました。

 

 

自宅で聞けた「うれしい」「おいしい」

退院当日です。

花江さんは自宅に着くと、車いすで玄関にかけたスロープを上がり、廊下からリビングを眺めました。

「うれしい」

病院でお会いしたときとは違う、少しびっくりしたような、それでいてやわらかな表情。

その目には涙が浮かんでいました。

 

後に花江さんは

「もう家へ帰れないかもしれないと思っていた」と僕に教えてくれました。

 

帰宅後のこと

僕は、体調や骨折部、飲み込む力などを確認しました。

花江さんは、入院中は食事がほとんど進みませんでした。

しかし、自宅で改めて確認すると、飲み込む力はずいぶんと保たれていました。

娘さんが水分のとろみを調整し、コップとスプーンを渡すと、花江さんはスプーンを持ち、ゆっくりと口へ運びました。

「おいしい」

 

病院で食べられなかったことと、この先も食べられないことは、必ずしも同じではありません。

場所が変わる。

そばにいる人が変わる。

声のかけ方や食事の形が変わる。

そして、ご本人が安心できる。

それによって、見えにくくなっていた力が、もう一度姿を現すことがあります。

もちろん、環境が変われば、すべての方が食べられるようになるわけではありません。

だからこそ、できなくなったことだけでなく、その方のなかに今もある力を、丁寧に確かめていくことが大切です。

 

 

暮らしを、一つのチームで支える

退院後は、

僕たちが、毎朝花江さんの家を訪問して、身支度や移動を手伝い、そのままりいふの通いを利用していただきました。

 

通いでは、

ひとつひとつの行為をリハビリとして捉えて関わりました。

食べること。

立つこと。

移動すること。

排泄すること。

会話をすること。

季節を感じること。

 

送迎後は

僕たちが、花江さんのその日の様子を娘さんに伝え、

食事、排泄、移動など介助の仕方を一緒に確認しました。

通いでできたことを、自宅での生活につなげる。

自宅で見つかった課題を、次の通いでのリハビリに生かす。

 

りいふでは、通い、訪問介護、訪問看護を同じ事業所の職員が担います。

ケアマネジャー、看護師、介護職が情報を共有し、ご本人の体調やご家族の状況に合わせて、泊まりも含めた支援を組み替えます。

別々のサービスを点でつなぐのではなく、同じチームが暮らし全体を面で支える。

退院後の状態がまだ見えない時期だからこそ、この連携柔軟性が必要でした。

 

 

その後も、暮らしは続いていく

花江さんが自宅へ帰ったことが、この話のゴールではありません。

退院後も、花江さんとご家族の暮らしは続きます。

体調のよい日ばかりではありません。

思うように食事が進まない日もあれば、介護をめぐって喧嘩になる日もありました。

それでも、食べること、排泄すること、移動すること、車椅子で散歩すること。

目の前の暮らしを一日ずつ重ねていきました。

娘さんたちが、うれしいことも大変なことも含めて花江さんを受け入れ、ともに暮らす。その生活に、僕たちも伴走する。

「状態が揺らいだ時にはすぐに支援を調整し、落ち着いている時には自立を目指して、伴走する。」

 

そうして迎えた1年後。

花江さんは、娘さん達と一緒に行きつけのお好み焼き屋さんを訪れました。

 

花江さんは

そこで

大きなお好み焼きに

たっぷりソースをかけて

きちんと一枚完食しました。

 

「あぁおいしかった。 遠くまで来たかいがあったね。 ああ おいしかった」

 

病院で「もう家には帰れないかもしれない」と思っていた花江さんが、再び家族と馴染みの店を訪れる。

 

これは劇的な回復の物語ではありません。

花江さんと娘さんたちが重ねた毎日の先に、少しずつ取り戻されていった日常です。

 

 

退院後の暮らしを、一緒に考える

自宅へ帰れば、すべてがうまくいくわけではありません。

在宅生活以外の選択が、その方に適している場合もあります。

大切なのは、最初から「できる」「できない」を決めるのではなく、ご本人とご家族がどのように過ごしたいのかを確かめ、難しさと可能性の両方を一緒に考えることです。

 

体調にも、気持ちにも、暮らしにも波があります。

揺らぎが大きいときには、本人や家族だけで抱え込まず、みんなで受け止め、支援の形を調整する。

落ち着いているときには、その時間を大切にする。

そうして揺らぎを少しずつ小さくしていくことで、その方にとっての「いつもの毎日」に近づいていけるのだと思います。

 

りいふでは、退院後の状態が予測できず、在宅生活に不安がある方について、退院前からご相談を受け付けています。

利用するかどうかが決まっていない段階でも構いません。

「この方の場合はどうだろう」と思われたときは、現在の状況をお聞かせください。

 

次回は、既存のサービスだけでは生活を続けることが難しい方のお話をご紹介します。

                                                小森

 

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