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かんぴょう巻き

こんばんは

今日はかんぴょう巻きを通じて、大きく成長した仲間の話です。

 

今年つむぐには2人の看護師が入職しました。

 

その中の1人の看護師が今春、92歳の利用者さんの主担当になりました。

その利用者さんは施設に入所されていて、心臓の状態も芳しくなく、認知機能や運動機能も落ちて車椅子生活の方です。

 

当時その看護師と話していた時のこと

業後に、りいふの水槽の前でボソッと

(その利用者さんのために)「何をすればいいのかわからないです」と正直な思いを打ち明けてくれました。

その後の会話の中で「答えは本人が知ってる」と気づいてから、彼女は早々に動き出しました。

 

彼女が聞き出してきたのは

「息子とご飯が食べたい」

「お寿司(かんぴょう巻き)が食べたい」

という利用者さんの生きる目的でした。

 

健康なら大した事ではないかもしれない

でもこの利用者さんにとっては大した事でした。

心臓が悪く、自分で車に乗り移ることもできず、高齢で、しかも施設に入所されている方

家族にも関係機関にも配慮しなければいけない

実現不可能と口にする抵抗勢力も存在していました

この状況では二の足を踏みたくなる心情は、僕も十分に理解しています。

 

それでも彼女は、

利用者さんの生きる目的を実現するための目標を細かく分解し

息子さん・施設スタッフへ本人の思いを伝え、達成すべき運動機能の向上させるためのリハビリを続けました。

半年という長い期間もです

きっと何度も諦めたくなったことだと思います。

 

利用者さんの病状が変化した時には「もうダメかもしれません」と口にしていました

きっと僕に伝える以上に心が折れそうな時や不安は多かったはずです

それでも来たる「その日」のために、彼女は来る日も来る日も地道にやり続けていました。

 

 

そして先日「その日」がやって来ました。

 

決行10日程前の夕方、連絡ツールを開くと、彼女から「〇〇さん 11/〇〇でス○ロー行ってきます」と入っていました

僕はついにやるかと嬉しくなり、「僕も行きます」と返信しました。

 

当日待ち合わせ時間に部屋に伺うと

彼女は、利用者さんが一番輝くかんぴょう色の服への更衣を終え

必要になるかもしれない物を脇一杯に抱えて

不安だけど「やるぞ」という強い決意の顔で、利用者さんの横にいました。

駐車場に移動して、息子さんの車に乗り込むとき

優しい言葉、きっと何度もイメトレしたであろう頼りがいのある介助で車に乗り込む姿

僕はそれまでの彼女の努力を想像して心が震えました。

 

寿司屋に到着してからは

利用者さんと息子さんが1つのテーブル

僕たちは横のテーブルに座って、親子の時間を邪魔しないよう、息を潜めながら待ちました

かんぴょう巻きを口にする瞬間を。

 

それからまもなく

「その日のその時」が来ました。

寿司レーンから流れてきたかんぴょう巻きの皿を、息子さんが取り

お母さん(利用者さん)の前に置きました。

優しい眼でお母さんを見つめる息子さん

利用者さんは、少し緊張した表情でかんぴょう巻きを眺め、手を伸ばし、口に運び

数秒の沈黙の後

息子さんの眼を見て、笑顔で

「おいしい」

と発しました。

 

その瞬間、彼女が小さい声で「よっしゃ」と口にして、

見えない位の小さなガッツポーズをとっているのを僕は見ました。

そうだよね

嬉しいよね

僕は自分の事のように嬉しくなりました。

 

そりゃ何年かぶりに、親子で美味しいもの食べた利用者さんの輝きは感動ものでした。

 

それでも、今日の僕には不思議と仲間のガッツポーズが強く心に刺さりました

嬉し泣きしそうな感情を押さえた感覚、カラカラになった口の感覚をはっきり覚えています

帰り道の利用者さんと息子さん、少し足取りが軽そうに歩く彼女の背中を僕は忘れることはないと思います。

 

人は変わる

 

半年前に不安そうだった背中が、たった半年で大きく頼もしい素敵な背中に変わっていました。

 

僕は彼女に「種を植えてもすぐには芽は出ないし、実もつかない。諦めずに育て続けるしかない」としか伝えることはできていない

それでも仲間に恵まれ自ら考え達成させた。

 

 

10数年前、看護師の大先輩が講演で僕に教えてくれました。

「看護師が自由になれば患者さんの可能性は広がる 自由な発想を持ちなさい」

 

それを実践した誇りある仲間に、そんな頼もしい成長をする姿を見せてもらい僕は幸せ者です。

 

杉ちゃん ありがとう!

                  小森

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