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「笑うの 初めて見た」 〜諦めなくていい暮らし②〜

りいふが支える「諦めなくていい」暮らしの話第2弾です。

 

胃ろうからの栄養。
日中も夜間も必要な吸引。
移動や排泄の介助。

医療的なケアが増えるほど、利用できるデイサービスやショートステイは限られ、本人や家族の希望とは別に、施設入所が現実的な選択肢になっていくことがあります。

第2回は、脳出血の後遺症により、胃ろうと頻回な吸引が必要になった健一さん(仮名)の話です。

 

 

医療が必要になるほど、選択肢が少なくなる

健一さんは脳出血を発症し、手術後にリハビリ入院をされていました。

右半身に麻痺が残り、話すことは難しくなりました。

身体を動かす際にも、本人の力を生かすことは難しく、介助する側の力に大きく頼る状態でした。

また、周囲の言葉をどのくらい理解しているのかも、反応だけでは判断が難しいとされていました。

食事は、胃ろうから一日3回。

入院中に誤嚥性肺炎を繰り返しており、昼夜を問わず吸引が必要でした。

「医療的なケアが必要だから、通える場所がない。

 通える場所がないから、家族が介護を抱える。

 家族だけでは続けられないから、施設を探す。」

 

僕たちはこの流れにしばしば直面します。

 

退院後の生活について、ご家族と話していたときのことです。

「でも、一回は家に帰してあげたいんだよね」

最初から施設へ向かうのではなく、まずは家族のいる家へ帰る機会をつくりたい。

それが、ご家族の思いでした。

 

 

医療を支えながら、暮らしを始める

退院したその日から、僕たちの関わりが始まりました。

看護師が自宅を訪問して呼吸状態や胃ろうの状態を確認し、主治医や薬剤師と相談しながら、栄養剤や薬の管理方法を、自宅で続けやすい形に整えました。

吸引や胃ろう、オムツ交換、体位変換など生活に関わることはご家族と一緒に確認しました。

家族ができること。

専門職が担うこと。

実際の生活の中で、その都度整理していきました。

便の処理や発熱のときには、ご家族から電話があり、僕たちが緊急で訪問することもありました。

栄養剤の投与やオムツ交換についても、初めのうちは娘さんから、

「まだ怖い」

「一人では心配」

という言葉が聞かれていました。

当然の事です。

それが少しずつ、

「多分やれると思う。困ったら連絡します」

に変わっていき、僕にはご家族の小さな心のガッツポーズが見えるよう

になりました。

 

通いでは、

入浴や排泄を支援すると同時に、座る、身体を起こす、車いすへ移るといった動きを、暮らしのなかのリハビリとして積み重ねました。

医療的な安全を支えること。

本人に残された力を使うこと。

 

選ぶ、示す

好きな音楽を流すと、目を潤ませる。

見たい動画を、自分で選ぶ。

好きな味の飴を選び、職員がそばで見守るなか、ゆっくり味わう。

ときには、こちらの心配をよそに、しれっと噛み砕く。

だから口腔ケアは飴を食べた後がいつもの流れです。

 

ある日、自宅へお送りした後、帰りのあいさつをすると、健一さんは左手を差し出しました。

こちらがハイタッチをすると、健一さんの口元が緩みました。

それを見た奥様が

「笑うの、初めて見た」

と呟きました。

今度は奥様とハイタッチをすると、健一さんの目から、涙があふれました。

 

言葉が出ないことと、理解していないことは同じではありません。

病院で理解を捉えることが難しかったのは、そのときの状態や環境では、反応が見えにくかったからかもしれません。

場所が変わり、家族との暮らしに戻り、同じ職員が継続して関わる。

自分で選び、自分の意思を示す。

そんな健一さんの「普通」が少しずつ戻ってきました。

 

身体にも表れた変化

初めは、車いすへの移乗を、介助者の力に大きく頼っていました。

しかし、繰り返し身体を起こし、残された左手と左足を使うなかで、声かけに応じて移乗に参加する場面が増えていきました。

やがて、左手と左足で車いすを自分で動かし、行きたい方向へ移動するようになりました。

ご家族からは、

「最近、靴を自分で履くよ」

と教えてもらいました。

小さなことに見えるかもしれません。

けれども、それは介助を受けながらも、健一さんが自ら選択して自ら動いて、自分の暮らしを取り戻してきている証です。

 

 

可能性を閉じないために

退院から約1年。

健一さんは、心配されていた誤嚥性肺炎を起こすことなく、自宅でご家族との暮らしを続けています。

すべてを一人でできるようになったわけではありません。

胃ろうも、日々の介助も、今も必要です。

でも、退院時に見えていた姿とは違う、健一さんの「らしさ」は健一さ

んを生き生きと輝かせ、僕らの光になっています。

 

りいふが目指すのは、医療的なケアに対応し、受け入れることだけではありません。

安全を支えながら、本人が選び、身体を動かし、暮らしに参加して、

諦めていたことに挑戦する機会を応援することです。

 

「医療的なケアが必要なことを理由に、本人の可能性まで閉じない。」

できないと決めずに、その人のなかに残されている力を、暮らしのなか

で確かめていく。

それが、看護小規模多機能「りいふ」の役割だと考えています。

 

利用するかどうかが決まっていない段階でも構いません。

「医療的なケアが多いから難しい」と結論を出す前に、現在の状態と、ご本人・ご家族が望んでいる暮らしをお聞かせください。

小森

 

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